土井敏邦 パレスチナ記録の会

『バッサムの手紙』

混声合唱サークル「比較的青年隊」による『バッサムの手紙』が「日本のうたごえ 2009年全国合唱発表会 金賞」を受賞されました。

バッサムとは、土井敏邦の長編ドキュメンタリー映像4部作『届かぬ声─パレスチナの占領と民衆─』の第1部『ガザ─「和平合意」はなぜ崩壊したのか─』に登場するエル・アクラ家の長男のバッサムです。

その映像の中で、彼が学生時代に抵抗運動によって政治犯としてイスラエルに拘束されていたとき、獄中から家族に宛てて書いた手紙が紹介されます。その手紙に興味をもった岡崎美佳さんが、知人の作曲家、港大尋(みなと おおひろ)さんに依頼して手紙に曲がつき、『バッサムの手紙』という歌ができました。

「比較的青年隊」
30代から40代を中心に構成されている混声合唱サークル。メンバーは神奈川、埼玉、東京、千葉等から集まり、日本語の合唱曲、ソング等を月1回程度練習・交流している。毎年「日本のうたごえ」合唱コンクールに参加。

バッサムの手紙

原詩:バッサム
訳:土井敏邦
作曲:港大尋

父さん 母さん 僕が手紙を書こうとすると
いつも言葉を失う

父さん 母さん 世界でもっとも美しいものを
教えてくれた

人を愛し 他人を助け
誠実であることを
父さんの豊かな言葉や振る舞いから
そして母さんの乳を通して
僕は二人から生きる力をもらった

僕は「さよなら」とは書かない
ただ「また、あとで」とだけ書く

(朗読)
「二人の姿は僕の脳裏から消えることはありません
二人が元気であってくれればそれ以上の望みはありません
どうか、弟妹たちにも僕と同じように教え伝えてください

弟ガッサン お前には大きな責任を背負わせてしまった
しかし、お前はそれを引き受けてくれることを信じています
僕たちの最高の宝である家族の世話をどうか宜しくお願いします」

乾ききった大地が雨を恋しがるように
蜜がほとばしり出る花を蜂が恋しがるように
僕は、あなたたち家族が恋しくてならない

僕は「さよなら」とは書かない
ただ「また、あとで」とだけ書く

親愛の情を込めて 忠実なる息子バッサム