Webコラム

ガザからの報告(2014年夏)
(5)ラファ虐殺・ある医師の証言

2014年8月5日(火)


(写真:クウェート病院の野外応急ベッド)

 8月4日午前、攻撃されたラファ市内のUNRWA学校避難所の取材(ガザからの報告(4)攻撃されたUNRWA学校の避難所)を終えると、私は負傷者たちが運ばれたという病院に向かった。そこはUNRWA学校から遠くない「クウェート病院」と呼ばれる小さな病院だった。門を入ると中庭の一角にテントが張られ、治療用のベッドが3台並べられていた。それを囲むように数十人の医者や看護師たちがイスや階段に座って待機していた。この小さな病院では次々と運ばれてくる患者たちの治療に対応できず、臨時に野外治療ベッドを設けたのだ。この医師や看護師たちの大半が、閉鎖されたラファ市の主要医療機関であるナジャール病院の医師や看護師たちであることは、医師の証言によって後に知ることになる。
 UNRWA学校から運ばれてきた患者を探すと、負傷した青年2人が、病室ではなく狭い部屋の床に敷かれたマットレスに横たわっていた。1人は性器と背中を負傷したが、応急手当の他はほとんど治療もできないまま放置されていた。


(写真:床で寝るしかないUNRWA学校攻撃の負傷者)

 ナジャール病院から退避しこの病院で活動しているエハサン・ケシュタ医師(39)がその理由をこう説明した。

「この病院は小さな私立病院です。外科手術もできず、患者のためのベッドもありません。何もないんです。手術室も集中治療室もベッドもないんです。ただ簡単な治療室が2部屋あるだけです。患者のために私に何ができるでしょうか。この病院に毎日300人の爆撃による負傷者たちが押し寄せてきます。この患者(UNRWA学校から運ばれてきた青年)はまだ軽い方です。とにかく収容できるベッドがないんです」

 ケシュタ医師は8月1日(金)にラファ市内で起こった事態についてこう証言した。

 「金曜日の午前10時から午後5時までの7時間の間にラファ市内全体で130人が殺され、250人が負傷しました。戦車の砲撃と空からの爆撃によってです。車やオートバイ、さらに道路を歩いている住民など動くもの全てがイスラエル軍の標的になりました。街の中心部でです。私は路上で友人を見つけました。しかし最初、それが友人であることが識別できませんでした。顔(頭部)がなかったからです。ただ胴体だけでした。しかし彼のIDによって、それが友人であることがわかったんです。

 イスラエル軍はガザ地区南部のラファ市から中部のハンユニス市への幹線道路を封鎖し、ハンユニス市内の病院へ負傷者を搬送することを阻止しました。このクウェート病院はとても小さく、収容できるベッドもない。まったくベッドがないのです。

 問題はラファ市で最も大きな病院であるナジャール病院がその金曜日に封鎖されたことです。病院の近くをイスラエル軍が爆撃し、病院の扉や窓が破壊されました。病院の周辺が危険なため、救急車も病院に近づくことができなくなりました。近づいて来るどんな車もイスラエル軍が爆撃するんです。だからナジャール病院を閉鎖し、そこの医者や看護師たちはこのクウェート病院に移動しました。私もこの病院の医者ではなく、ナジャール病院の医者です。今ここにいる医者の大半がナジャール病院の医者たちです。

 今はナジャール病院のあるラファ市東部地区は危険で近づけません。その近くにいる負傷者から救助に来てほしいという電話が入っても、その現場へ行けないんです。20体ほどの遺体が路上に放置されたままですが、収容に行くこともできません」

Q・7時間の間に130人が殺されるなんて信じられません。いったいどうやって殺されたんですか?

 「信じがたいことですが、私はこの眼で目撃したんです。当初約70人の遺体がナジャール病院に、残りの約50人がここに運ばれましたが、ナジャール病院が危険になり、金曜日の午後6時にここ移されました。死亡した人たちのリストがこの病院にあります。最終的には犠牲者の全てがこの病院に運ばれてきました。その犠牲者の30%が12歳以下の子供で、20%が50歳以上でした。女性は約20%です。

 国連はいったどこで何をしているんですか!ここで起こっていることを観るべきです。家も学校も、それに救急車も標的になるんです。この病院の2台の救急車が攻撃され破壊されました。私の友人であった救急車の運転手と看護師、助手も殺されました。救急車の中にいた患者も殺されたんですよ。

 攻撃のひどかった地区は、まるで映画の中の破壊跡のようです。危険で今でも近づけないところもあります。私のファミリーも昨日、男性5人が殺されました。空爆によってです。その前日は同じくファミリーから2人が殺されました。彼らは『テロリスト』でも何でもありません。ただ働きに行こうとしていたり、家族のために買い物に行っていたんです。

 翌日の8月2日(土)にはまた約70人が殺され、日曜にはさらに70人が犠牲になりました。この病院に運ばれてくる犠牲者の数は、最高の数に達しています」

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