Webコラム

2006年夏・パレスチナ取材日記 6

レバノン報道に隠されるガザの殺戮

7月26日(水)

 未明から昼までにイスラエル軍のガザ市東部への侵攻で子どもや身体障害者を含め22人が殺害された。しかし世界の目はレバノン情勢に向いていて、ガザで起こっているその深刻な事態は注目されなくなっている。イスラエル軍はそれを利用してか、やりたい放題に侵攻・パレスチナ人殺害を繰り返す。昨日、ガザ地区全土にピンクの小さなアラビア語のビラがイスラエル軍によって空から撒かれた。それにはこう記してある。

ガザ地区の人々へ

引き続くテロとガザからのロケット攻撃のために、イスラエル国防軍はガザ市民やイスラエル市民を脅かす武器の倉庫やテロ組織のメンバーに対して軍事作戦を行う。

ガザの住民はテロリストのためにとても高い代価を支払わなければならない。

レバノン市民に対するナスララの「約束」や、パレスチナ人に対するハマスの「約束」のような、誤った先導の声・主張のために、あなたがたの財産に大きな損失を招いている。

イスラエル軍司令官

 イスラエル軍は新たな「破壊作戦」を始めた。武装勢力のメンバーの家にイスラエル軍諜報機関が直接電話をかけ、「10分以内に家族と共に家を出ろ。10分後にお前の家を爆破する」と警告する。そして予告通り、F16戦闘機がその建物を爆撃する。家を完全に破壊され、中に残った者は殺害される。この「破壊作戦」によってすでに数人の武装勢力のメンバーの家が破壊されている。

 ハンユニス市内の電力配給会社を訪ねた。この会社は自治政府とハンユニス市が50%ずつ出資して作られた公社だ。発電所の破壊以来、これまでガザ地区使用電力の50%を頼ってきたイスラエルからの電力でやりくりしなければならない。この会社ではハンユニス市を2つの地区に分けて、交互に7時間ずつ配電している。つまりA地区に配電されるときは、B地区は停電し、7時間後には逆転する。私が滞在する地区では、今日は午前3時から午前10時まで電気があり、その後、午後5時まで停電、そして午後12時まで電気がつくというシステムだ。電気のある時間が日によって大きく変化する。昨日は夜はまったく電気がなく、テレビのニュースも見れず、電気を必要とする映像チェックの作業もできない。パソコンの充電が切れると、メールチェックもこうして日記を書くこともままならない。
 配給会社の責任者の説明によれば、発電所で破壊されたのは変圧器で、同じシステムの変圧器を隣国で探しているがなかなか見つからないという。順調にいけば半年で修復できるはずだが、代替の変圧器のシステムを変えなければならないならば、さらに修復には時間がかかる。また新たな変電機が購入できたとしても、イスラエルがすんなりとガザ地区に搬入することを許可するか疑問だ。もしイスラエルが妨害すれば、1年以上も今のような電力事情が続くことになる。ガザ地区の経済に与える被害は甚大だ。

次の「2006年夏・パレスチナ取材日記」へ