Webコラム

日々の雑感 290:
「沖縄への旅」報告(2)初めての高江訪問

 →「沖縄への旅」報告(1)“パレスチナ”と“オキナワ”そして“フクシマ”


(写真:高江のヘリパッド建設反対の監視テント)

2013年2月14日(木)

 今回の沖縄への旅のもう一つの目的は、高江で、ヘリパッド建設反対の闘いを続ける住民に、パレスチナ映画『壊された5つのカメラ』を観てもらうことだった。私はこれまで高江を訪ねたことがなかった。しかし友人の写真家・森住卓氏が長年、足繁く通い、写真を撮り続けていることは知っていて、彼がこれほどまでにこだわる「高江」とはどういう場所なのか、いつか訪ねてみたいとずっと思っていた。藤本幸久監督のドキュメンタリー映画『ラブ・沖縄』で、私は初めて、住民やその支援者たちの闘いの様子を映像で観た。そして昨年12月、エルサレムで観たテレビドキュメンタリー番組『標的の村』によって、私の「高江に行ってみたい」という気持は、「行かなければ」という思いに変わった。そこで描かれている高江の現状に、私は「日本の中の“パレスチナ”」を見たからである。

 高江訪問は、もう一つの力にも背中を押された。ジャーナリストとして現場で撮影するとはどういうことなのか、「伝えるという仕事」は何なのかを問いかけてくる映画『壊された5つのカメラ』を観た森住氏が私に電話をよこし、「この映画を今すぐ、ヘリパッド建設を強行され落ち込んでいる高江の住民に見せてほしい」と依頼した。私は、この映画を日本に紹介した「浦安ドキュメンタリーオフィス」の中山和郎氏にそのことを伝えた。すると、彼は「ぜひ観てほしい。私も行きたい」と言った。
 那覇市での講演を終えた私は、翌日の1月26日、空港で中山氏と合流し、沖縄の牧師・金井創氏に案内してもらいレンタカーで高江に向かった。名護市近郊まで高速道路を使っても、那覇市から2時間以上も要した。高江は、かつては今のような道路もなく、船でしか往来できない辺境の地だったという。そういう地理的な距離のせいだけではなく、同じ沖縄であっても、那覇市など南部の住民にとって、ほとんど訪れることもない、心理的にも“遠い僻地”だと那覇市のある知人から聞いた。だから、一般の沖縄住民にとっても、高江の闘いは、普天間や辺野古などとは違い、広く認知はされてこなかったという。
 金網で囲まれた森、道路脇の監視テント、「ヘリパッド建設反対」の横断幕……。すべてドキュメンタリー映像で観た通りの光景が目の前に広がった。監視テントでは、本土から来た支援者が独り監視を続けていた。金網の中の森の中から建設機械が動く音が聞こえる。すべてのゲートは封鎖されているが、住民側もわからない場所から作業員が敷地内に入り、作業を続けているという。ヘリパッドが完成したら、ここにあのオスプレーがやってくる。
 テントにやってきた住民の一人が私に言った。
 「私たちは単にこの高江にオスプレーがやってくることに反対しているんじゃないんです。そのオスプレーはここからアジアや中東各地に出動して人を殺すことになるでしょう。この高江がそのように人殺しの基地されることに私たちは反対しているんです」

 パレスチナ映画『壊された5つのカメラ』の上映が実現したのは、到着したその夜だった。支援者たちの宿泊場所となっている「トゥータンヤー」(トタン小屋)に、住民や本土や沖縄各地から来た支援者ら20数人が集まった。映画上映の直後、参加者は押し黙り、重い空気が流れた。なかなか感想が出てこないので、こちらから指名して感想を求めると、若い住民の一人が、「自分たちの闘いと重なって、観ていて辛かった」と言った。また他の住民は、「ここでの闘いもたいへんな状況だけど、銃撃を受けたり、殺されるということはありません。でもパレスチナでは反対運動で殺されてしまう。私たちより、もっとたいへんな状況のなかでパレスチナ人は闘っていることに衝撃を受けました」と答えた。
 高江で長年、記録映像を撮り続けてきた若いドキュメンタリスト、比嘉真人さんは、高江を撮り続けることに迷い、悩み、そして長い間、映像が撮れなくなっていたという。その比嘉さんが、「衝撃を受けて、うまく言葉にできません。自分が撮影することの意味を問われました」と言った。
 私はこの映画を高江で上映することになった経緯を語った後、上映に込めた思いをこう伝えた。
 「この高江の闘いは、重大な国際問題であるパレスチナ人の闘いにも通じる、普遍的な闘いだと思います。みなさんの高江での闘いは決して孤立した闘いではありません。そのことをみなさんに伝えたくて、この映画を高江に持ってきました。普天間や辺野古で闘っている人たちにもぜひ観てほしい。日本で一番切実に、深くこの映画を受け止めてくれるのは、他でもない沖縄の人たちだと私は思っています。沖縄で闘う人たちをこの映画がいくらかでも励ますことになればと願っています」

【関連サイト】

次の記事へ

ご意見、ご感想は以下のアドレスまでお願いします。

連絡先:doitoshikuni@mail.goo.ne.jp